【ジロ2019】一番強かったのはミケル・ランダだったと言いたい【前編】

主な総合系選手の順位推移表(第1週)

ジロ2019の感想をずっと書きたかった!

個人的には、2019年のグランツールの中ではジロが一番面白かった。

それも、去年のジロよりも面白かったと思います。

それに、あまりそういう意見を見かけませんが、ジロ2019で一番強かった選手はランダだったのでは?と思っています。

理由も書いていきます。

昨年のジロ2018との違い

おそらく、ジロ2019が昨年に比べてあまり面白くなかったという人の理由の1つには、フルームやデュムランといった圧倒的な選手が総合争いにいなかったからというものがあるだろうと考えます。

いや、もっと端的に述べると、

Sky(イネオス)が弱い

ということが、昨年のジロ2018との決定的な違いのように思います。

近年、Sky(イネオス)のツール偏重構成によりジロ・ブエルタに戦力が投入されない(当社比)という傾向は見られましたが、

特にジロ2019は、絶対的エースであるクリス・フルームが直前に「鼻くそ落車」によるシーズン通しての離脱という事件が発生したので、チーム編成が余儀なくされました。

加えて、ジロでエースを任されていたエガン・ベルナルも鎖骨を5月に骨折し、直前にツールへとシフトした(おかげで、偉業を成し遂げた)ので、

「絶対的エース不在」という状況が生まれてしまいました。(もちろん、シヴァコフやゲオゲガンハートも強い選手なのですが)

これにより、ジロ2019での総合争いは実質Sky(イネオス)抜きになり、それは集団においても絶対的なチームが存在しないということになるので、総合争いが混沌となるのは必然のことだったと言えます。

……うーん。

分かってはいたのですが、何と言いますか。

Sky(イネオス)というチームの強さがグランツールのレース展開を変えてしまう、左右するという近年の状況を改めて思い知らされました。

すなわち、Sky(イネオス)の存在感が薄いジロ2019、及びブエルタ2018・2019では、リーダーチームがレースを過度にコントロールしない(出来ない)ために、想定外の大逃げ集団は発生しやすくなるし、戦略的「伏兵」が力で押さえつけられない傾向になっていたように思います。

その傾向はツール2019で、クイックステップがリーダーチームかつSky(イネオス)アシストの調子が悪い際にも少し見られました。

逆に、Sky(イネオス)の存在感が強い場合には、圧倒的戦力でレースをコントロールして絶対的エースをお膳立てするので、調和的なエース同士の殴り合いになります。

フルームが第3週までリーダージャージを着なかったジロ2018でさえ、圧倒的なアシスト陣がいたからこそ、絶対的エースであるフルームが勝つことが出来たのだと思います。

無論、フルームの天才的長距離独走が直接の勝負を付けているのですが、実はそれ以外で既に他チームのエースは「見えない秒数」を稼がれていたように思います。

その強さ、悪魔的
その強さ、悪魔的

この近年の傾向を良しとするかどうかは個人の好みによると思いますが、これは例えるならば、野球における黄金期の巨人軍団のようなヒール役をどう思うかということです。

プロレス的なガチンコが好きか、ねちっこい寝技の応酬戦が好きか、この好みの違いがジロ2018とジロ2019の評価を分ける気がします。

私は後者です。

ログリッチから見る第1週

ここからは、【後編】の最後に「ランダが一番強かったのでは?」という感想を書くためにレースを個人的な偏見から分析していきたい。

そこで、まず【前編】では第1週、1回目の休息日までのstage1~stage9の感想・分析を書いていくのですが、

第1週に関しては、ログリッチを基準に注目したい総合勢を見ていくのがいいような気がします。以下に簡単なお手製グラフを載せます。

主な総合系選手の順位推移表(第1週)
主な総合系選手の順位推移表(第1週)
主なステージ終了後のログリッチとのタイム差グラフ(第1週)
主なステージ終了後のログリッチとのタイム差グラフ(第1週)
主なステージ終了後のログリッチとのタイム差(第1週)
主なステージ終了後のログリッチとのタイム差(第1週)

stage1(TT)

ジロ2019はTTが3回設定され、TTを得意とするオールラウンダー向けのコースプロフィールだということは開幕前から言われていました。

stage1はTTから開幕しましたが、トップタイムを記録したのはログリッチ。

優勝最有力候補の一人が早速マリアローザを着用しました。

しかも、続く2,3,4、5位にはそれぞれサイモン、二バリ、ロペスと同タイムでデュムラン、そしてマイカが入り、錚々たるメンバーが並びました。

ロペスはTTを強化した甲斐があったなぁと思った記憶があります。

一方で、モビスター勢、カラパスとランダは順位とタイムを大きく付けられています。

ランダに至っては既に1分以上のタイムを失っています。

この時点では、前評判通りTTが得意なオールラウンダーが有利で、クライマーを揃えたモビスターは不利だと思っていました。

stage3

初山選手が単独で逃げたステージです。

そして、ここに挙げている選手の中では、カラパスがメカトラで46秒を失っています。

しかしこの時点では、視聴者も選手達も、「モビスターのエースはランダだ」と思っているので、そこまでこのタイムの失い方は気に留めていなかったはずです。

ただ、どうも後で分析するに、

このタイミングでの、この絶妙なロスこそがカラパスにとってケガの功名になっている

と主張しておきます。

stage4

衝撃的な出来事が起きたステージです。

ここは、ジロ2019を通して1つのターニングポイントであったと思います。

残り7kmを切ってレース終盤の位置取りが激しくなるタイミングで、落車が相次いで発生し、集団が分裂。総合勢もその影響を受けました。

デュムランは膝を負傷し、このステージは完走したものの、DNF。

二バリ・サイモン・ランダ・ロペスは先頭集団に残ったログリッチとタイム差を広げられ、同じく先頭集団にいたカラパスがステージ優勝を果たしました。

何よりも大きな出来事といえば、デュムランが早々にレースを離脱したことです。

これには多くのロードレースファンが心配と失望をしたと思います。

そして、ジロ2019にはフルーム級の絶対的エースは存在しなくなってしまいました。

辛うじて二バリはそうだと言えるかもしれませんが、最盛期を過ぎています。

これにより、マークする共通目標が失われてしまったため、上位勢の牽制が起こりやすくなりました。

加えて、もう一つ。

実は、カラパスが勝利したことで、二バリ・サイモン・ロペスから28秒タイムを奪っているのです。ランダに至っては44秒です。

特に二バリに対する30秒近いゲインは、最終盤の展開を左右したように思います。

また、勝利と同時にエースであるランダに45秒近い差を付けてしまったことで、「あれ?カラパスでも勝負できるんじゃない?」とチーム内での力関係が揺らいだ瞬間でもあった気がします。

stage6

ここで総合勢にタイム差は付いておらず、従ってログリッチが依然としてマリアローザ最有力候補だということに変わりないのですが、順位の面で大きな変動がありました。

逃げ集団をユンボがコントロールしなかった(出来なかった)ために、マリアローザをコンティに譲ることになりました。

注意すべきは、ジロ2019を通してユンボが「逃げ・前待ちを容認する」・「マリアローザを預ける」という方針にあった(そうする他なかった)ということです。

この背景には「アシストの強さ」があります。

これがもし、Sky(イネオス)の強力なアシスト陣ならば、大逃げや前待ちはコントロールされて徹底的に潰されていたでしょうし、マリアローザは譲ることなくそのまま守りきったでしょう。

一方でユンボは、ジロ2019において、集団コントロールに投入できるだけのアシストが用意できていなかったように思います。(ここにも「ツール偏重傾向」が背景にある。)

ジロが若い選手中心で構成されているために、グランツールでアシストを完璧に務めるだけの経験・調整が圧倒的に足りなかった。

顕著なのは、山岳の頼みの綱であったデプルスが山岳戦が本格化する前に消えていたことからも分かります。

セップ・クスも調整不足でした。続くブエルタでは優秀にログリッチをアシスト出来ていました。実力はあるのです。

この「アシストの強さ」の差がログリッチに付け入る隙を与えたのは間違いないです。

stage9(TT)

最終順位の明暗は、ここから別れ初めていたことが総合順位表から分かります。

カラパス、二バリ、ログリッチ、ランダが順位を上げる一方で、サイモンとロペスはズルズルと順位を下げています。

ログリッチからのタイム差的には、大体二バリが1分、カラパス、マイカが2分、ランダ・サイモン・ロペスが3分失っています。

タイムの失い方は、stage1のTTに大体沿っているので問題はないです。

ここで問題なのはむしろ順位の方で、自身の調子の上がり方が順位の上がり方に反映されていたのではないかと考えます。

開幕時のフレッシュな状態でのTTと、第2週目に向かおうとする休息日前のTTとでは、真の調子の状態を表すのは後者です。

ここから示唆されるのは、第2週目に向けて、ログリッチとカラパスの状態はかなり好調であったのに対し、サイモンとロペスは本調子でないのだということです。

これが正しいのかどうかは次の【中編】で。

では、さよなら。

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