【クリスタ】コンビニスキャンでアナログ漫画をデジタル原稿にする方法

表現色をモノクロにするとゴミも飛ぶ

ここ1週間ほど、今までアナログで書いた漫画をコンビニスキャンでデジタルデータにしようとして四苦八苦しておりました。

断片的な情報自体はネット上にあるんですが、それらがまとまっていないためトラップや面倒なことがちりばめられている印象です。

もしかしたら、ここの情報すらトラップになっている可能性もあります。

加えて、デジタル漫画に関する根本的な知識がかなり不足していたので結構な勉強代を払うハメになりました。

ただ折角、私はこういう風に情報を集積する場所を持っているので整理して置いておくことにします。

セブンイレブンでアナログ原稿をスキャン

※注)トーンを既に貼ってしまった原稿をスキャンすると、モアレ(印刷時の予期せぬ模様)が発生する可能性が高くなります。ですので、トーンを剥がしてスキャンするのが望ましいです。

(↑後の項目でサンプルを載せます)

何よりもまず、アナログ原稿をデジタル化するためには、「スキャン」を行い、データとしてパソコンに取り込む必要があります。

そこで家にスキャナーがあれば良いのですが、投稿用の原稿用紙は大きくそのまま取り込むのが難しいですし、そもそもスキャナーが使えない場合があると思います。

そういう場合をこの記事は想定しています。

セブンイレブンのマルチコピー機(光は毎度ごめんなさい)
セブンイレブンのマルチコピー機(光は毎度ごめんなさい)

その場合、まずはUSBと原稿を持ってセブンイレブンに向かって下さい。

なぜならば、漫画原稿で推奨されている600dpi以上でのスキャンが行えるのがコンビニではセブンしかないからです。

よって、置いてある機器の関係で2020年6月4日現在、ローソンやファミマは望ましくありません。

ちなみに、店員と客の目が気にならないこともないので、早朝に行った方が良いかもしれないです。(夜は輩がいます)

セブンイレブンに着いたら、スキャン機のメニューから「スキャン」→「白黒」→「文書/写真(自動)」→「600dpi」→「スキャン濃度(お好みだが濃い目が良い)」→「TIFF」を選択します。

「白黒」→「文書/写真(自動)」→「600dpi」→「スキャン濃度(お好みだが濃い目が良い)」
「白黒」→「文書/写真(自動)」→「600dpi」→「スキャン濃度(お好みだが濃い目が良い)」
モノクロ漫画なのでTIFFで保存
モノクロ漫画なのでTIFFで保存

後で補足項目に書きますが、ここで「写真」メニューを選択してしまうと、クリスタで直接開くことが出来なくなり、面倒なステップが1つ増えます。注意してください。

後は原稿を順にスキャンします。これでひとまずはスキャン作業完了です。

補足:「写真」メニューでスキャンした場合

先に触れましたが、「写真」メニューでスキャンをしてしまった場合、そのデータをクリスタで「読み込み」しようとすると、以下のメッセージが出ます。

tifファイルが読み込めない
tifファイルが読み込めない

「読み込めない」って言うんです。

しかし、データ自体に問題はありませんし、フォーマットもTIFFです。

これについて詳細は分からないですが、どうも「写真」メニューだけ他2つと違う画像圧縮アルゴリズム(FAX4?)を使っていて、それがクリスタに対応していないようです。

その場合、jpegやpngなどクリスタで読み込みできるフォーマットに再変換してやる必要があります。

「tif」→「jpeg」や「png」です。

そういうフリーソフトやプログラムを利用してもいいですし、私は枚数が知れていたので、手作業で「ペイント」から保存し直しました。

ペイントで開いて保存し直す
ペイントで開いて保存し直す

この際、変換によるデータの劣化が生じるのか?ということは知らないのですが、白黒データではそんなことないだろうと考えておきます。ざっと見比べた感じはドット抜けを起こしている感じはなかったです。

2014年時点で、クリスタのサポートに同様の問い合わせが寄せられてはいるのですが、ver1.9.5現在もまだ対応されていないです。対応の費用対効果が薄いんでしょうね。

データを読み込み

以降、使用ソフトが「ClipStudioEX」であることを前提に操作方法を書いていきます。

デジタルで漫画を管理するならば、「EX」での追加の管理機能等は必須な気がしています。「Pro」の人はバージョンアップしときましょう。本当に便利です。

さて、まずはスキャンした画像データを読み込む新規キャンバスを作成します。

「ファイル」→「新規」→「コミック」を選択します。

今回、私がスキャンしたのは投稿用原稿用紙でしたので、「商業誌用裁ち落とし5mmモノクロ(600dpi)」プリセットを選択し、複数ページにチェックを入れ、ページ数を入力して、新規作成します。

複数ページで作成するのが便利
複数ページで作成するのが便利

その後、画像データをレイヤーに読み込みます。

パソコンのスペックがそれなりであれば、「ファイル」→「読み込み」→「一括読み込み」で全ページ読み込むことが出来ます。

(↑私のパソコン構成についてはこちら、これでまあまあ問題なく使えているという感じです)

Shiftキー押して全ページを選択
Shiftキー押して全ページを選択

パソコンの負荷的に難しいならば、個別に「ファイル」→「読み込み」→「画像」でスキャンした画像データを読み込みます。

線画を抽出

続いて、読み込んだレイヤーをラスタライズ(ビットマップ化)し、線画を抽出していきます。

ラスタライズ→ガウスぼかし→レベル補正→モノクロ化→仕上げ

上記の順に進めていきます。

もちろん、他に良い方法をご存じであればその方法でお願いします。(そして、私に教えて下さい)

まずは、とりあえず全てのページで読み込んだレイヤーをラスタライズしていきます。

とりあえずラスタライズ
とりあえずラスタライズ

この時点で、「色の閾値」をスライドすることで線の濃さを調整することもある程度出来るのですが、その処理は後に任せて、私はとりあえず全部ラスタライズしました。

レイヤーをラスタライズすることで、加筆修正等の作業が出来るようになります。

ガウスぼかしをかける

続いて、「ガウスぼかし」をかけます。

ここからの方法はこちらのサイトで紹介されていた方法を基本的に参考にしています。

それで、「なぜガウスぼかしをかけるのか」ということを説明しておくのですが、こちらの画像を見て下さい。

一見すると普通にスキャンされている
一見すると普通にスキャンされている

一見すると普通の画像に見えるのですが、拡大するとこうなります。

コンビニスキャン画像を拡大
コンビニスキャン画像を拡大
良く見るとドット抜けしている
良く見るとドット抜けしている

読み込んだ画像データは「疑似階調」というドットでの疑似グレー表現になっています。

これはコンビニスキャナの画像圧縮技術的にそうなっているようです。

それで、これをこのままゴミ取りフィルタにかけるとこうなります。

ゴミ以外のドットも飛んでしまう
ゴミ以外のドットも飛んでしまう

隣接ピクセルがところどころ抜けているので、「空白」と判定されているのでしょうか。予期しない消え方をしてしまいます。

これでは都合が悪いので、ガウスぼかしをします。

3.0px~6.0pxぐらいでしょうか。どのぐらいが良いのかイマイチ分かりませんが、私は4.5px辺りでガウスぼかしをかけていきました。2.0pxぐらいでもいいかもしれません。

表現色をカラーに変更して、ガウスぼかしを行う
表現色をカラーに変更して、ガウスぼかしを行う

ちなみに、ガウスぼかしはレイヤーの表現色がグレーかカラーでないと選択出来ないようになっています。

続いて行う、「レベル補正」も同様です。

tifから読み込むと表現色は「モノクロ」になっているので、右側から「カラー」に変更しましょう。

レベル補正を行いモノクロ化

ガウスぼかしを行うと、それまで埋まっていなかったピクセル同士がくっついて滑らかになるのが分かると思います。

ガウスぼかしによる線の補正
ガウスぼかしによる線の補正

そうした状態でゴミ取り及び二値化(モノクロ化)を行い、線画を抽出します。

まずは「レベル補正」で、線の濃さ(画像の輝度)をある程度濃くします。

ここであまりにも線を濃くしてしまうと、同時にゴミも濃く出てしまい後に残ってしまうので、振り切らないように注意して下さい。

レベル補正で全体の輝度を調整する
レベル補正で全体の輝度を調整する

その後、表現色を「カラーorグレー」→「モノクロ」にすると、閾値以下の点がモノクロ化の際にはじかれて大体無くなると同時に、主線はモノクロ化されて抽出されます。

表現色をモノクロにするとゴミも飛ぶ
表現色をモノクロにするとゴミも飛ぶ

後は消しきれなかった大きめのゴミが少し残っているはずなので、それを手動で消し込んで、表現色を「黒」のみにします。

線画のみのレイヤーが出来る
線画のみのレイヤーが出来る

これで線画の抽出完了です。

コツとしては、レベル補正とモノクロ化を合わせて主線を出すこと。ゴミをふるいにかけて消し込むイメージです。

仕上げ作業の後、画像として書き出して完成

線画が抽出できたら、後は細かい仕上げ作業です。

線画を修正する人は線画を修正します。

トーンを入れる人はトーン作業に移ります。

無ければ、セリフを入れていきます。

元原稿にセリフを鉛筆で入れている場合は、これまでの工程で黒色の線として残っているはずなので、消し込みながら「テキスト」機能でセリフを入れていきます。

テキスト機能で文字を入れていく
テキスト機能で文字を入れていく

ちなみにセリフ入れの工程だけでも、どういうフォントでどういう大きさ・太さで入れるかということで随分印象が変わってしまうということに今更気付きました。

テキストを自分で入れたのが初めての経験だったんですよね。言われてみれば当然ですが、あまり気が回っていない部分でした。

大変ですね漫画作りは。奥が深すぎる。

画像として書き出し

ある程度納得の出来る画面作りが出来たならば、保存して画像として書き出します。(保存はこまめに行いましょう)

「複数ページ」で管理している場合、一括で書き出すことが出来ます。

「複数ページ書き出し」→「一括書き出し」から書き出すフォーマットを選択します。

書き出すデータ形式を設定
書き出すデータ形式を設定

どういう形でデータを欲しいかによりますが、今回私は「トンボの内側」までをtifファイルとして書き出しました。

これで、ようやくアナログ原稿→デジタル原稿への変換完了となります。

そして出来れば最後に何ページが印刷してチェックするのが良いです。画面上の見え方と、元原稿と、結構印象が違いますので。

補足:トーンを貼ったものをスキャンした場合

始めに「モアレが出来るのでトーンはなるべく剥がしてスキャンした方がいい」と注意書きしましたが、そうしたくない場合もあると思います。

……例えば、過去の原稿で複雑なトーンワークをしたものを再現が出来るか分からないため剥がすのが怖いとか、デジタル化してデータで持っておくけれども元原稿はそのまま賞に出すとか。

まあ、大抵は「トーン処理はデジタル作業にしたい」という人だと思うので、こういう需要は少ないかもしれません。

ですが私は、このように偉そうに語っておきながら上記のことが始め分かっていなかったので、スキャン作業をトーンを貼ったまま行ってしまいました。

それで、どんな感じになったかというサンプルが出来たので折角ですから載せておきます。

出来る限り頑張ってみました。

最大限の努力をした60線トーン
最大限の努力をした60線トーン

どうでしょうか?

同じ模様が並ぶべきトーン部分のドットが、全くバラバラになってしまっています。

……はい、モアレです。

ただ、私はシルエットを際立たせる目的程度にしかトーンは使っていないので、これぐらいのモアレだったら別にいいんじゃないのかなとも思うんですが……

モアレでちょっと荒れている気はする(データを印刷)
モアレでちょっと荒れている気はする(データを印刷)

こういう低い志だからダメなんでしょう。

でも、折角書いたから賞にもそのまま出したかったし……

結論から申しますと、トーンはデジタルで処理した方が良いのは間違いないです。

はあ、、、またやり直しですよ……(´_ゝ`)

トーンのコンビニスキャンデータ処理

ところでトーンを貼った原稿をコンビニスキャンした際ですが、これは上で見せたようにトーンの模様をそのまま残す方法はないと考えてよいと思います。

コンビニスキャンしたトーンはどちらにせよドットが一部抜け落ちていますし、従って不揃いな形になっていますので、どちらにせよ「ガウスぼかし」を行う必要があるからです。

トーンの柄をはっきり丸くだそうと思えば、逆説的にノイズも濃く出てしまうので、結果トーンの柄とノイズが一体になって柄が綺麗に出ません。

この方法では綺麗な柄が並ぶということは決してないと考えた方がいいです。

そして他の方法、例えば「ライン抽出」による補正も試行錯誤する上で使える可能性はあるようにも思いました。

しかし、結局この線画抽出でやっていることというのは「いかにトーンの柄を潰さずに、ゴミを消し込むか」ということなので、トーンの柄が全く潰さないということはほぼ不可能だと思います。

まとめと感想

コンビニスキャンでデジタル化は、トーン作業をデジタルで行う限り十分可能だと思いました。

しかし、やはりこの方法は苦肉の策である気がします。

スキャンも1枚当たり30円と、安いものではないのでコスト的にもオススメ出来ません。

私はたった60p余りをスキャンしただけですが、知識不足で失敗したものを含めると3000円以上かかりました。

これなら、今後もアナログ手法を取り入れ継続的に漫画を描いていく予定の人は最初から大きいスキャン機を買った方がいいと思います。

いちいち、コンビニに行くのもメンドクサイですし。

とはいってもA3スキャン機は安いやつで5万、性能が少し上がれば10万程度します。少し怯んでしまいますね。

それに、A3まで対応した大きなスキャナーって製品のラインナップがガクッと減るので、値段は高いし、質も改善されにくいようです。

他に考えられるのは、A4スキャナーを1万円ぐらいで買って、分割で読み込むかトンボ内の範囲だけ読み取るという方法ですが、今度はそれ用に作業が要るしなぁ……。

悩ましいですね。

手法を試行錯誤している段階の人は、コンビニスキャンも有効かもしれないです。

そう考えると、コンビニスキャンを利用する人って意外と多くいると思うんですよ。

セブンイレブンにはもう少し頑張ってもらって、それ用の機能を搭載し、スキャンの値段を下げてもらいたいところですね。(印刷・製本は頑張ってる感じですが)

ローソンでもいい。頑張ってくれ。

いずれにせよ、漫画をデジタルで管理するのにClipStudioEXとそれなりの性能のパソコンが必須だということは再認識しました。

ので、デジタル検討の人は是非EXと自作PCを。(自作PCは頑張れば初心者でも組めました

では、さよなら。

“【クリスタ】コンビニスキャンでアナログ漫画をデジタル原稿にする方法” への4件の返信

  1. 記事を読ませて頂き大変たすかりました。
    今回、仕事を頂いた方からグレー化してると指摘されレイヤーLT変換いじったり苦労してたのですが、こちらの方が確実ですね。とても参考になりました。ありがとうございます。

    1. masaさん
      コメントありがとうございます。
      仕事ということはプロの方ですか。凄いですね。
      少しでもお役に立てたようで嬉しいです。
      実はコンビニスキャンの記事については結構読まれているので、そういう需要があるのだと思います。
      ですので、この記事は何らかの方法で残しておきたいと思います。
      貴重なご感想、ありがとうございました。

  2. さっそくのコメント有難うございます。
    えむたさんの記事を読んで本当に助かりました。実はプロと言ってもプロアシ稼業をしています。元はグラフィックデザイナーを長年してましたが引退して漫画を少し描いてます。20代の初めは北斗の拳など少し手伝っていましたが挫折して間口の広い世界に流れた次第です。最近また漫画を描き出したのですがセブンのスキャナーの件で悩んでるところに、こんな有意義な記事が見つかり、とても感謝です。ぜひ、他の記事もまた読ませて頂きますね。返信ありがとうございました。

    1. masaさん
      こちらこそ返信ありがとうございます。
      プロアシ稼業というのもプロには違いありませんね。
      やはり凄いですね。スキルによって稼ぐというのは凄いことです。
      ただ、そんな方にとって、このブログに有用な情報はもう残っていないかもしれません。
      しかしともかく、貴重なご感想ありがとうございました。

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