ツール2020の第1週が終わりました。
今年のツールは例年以上に読めないということは言われていましたが、大波乱です。
事前に行ったツール2020の予想は早くも外れてしまいました。恥ずかしい^^;
何故予想が外れたのかという言い訳を中心にステージ毎の感想を述べます。
目次
大波乱の第1週各ステージ感想
こんなにも総合争いの勝負が激しいツール第1週を私は見たことがありません。
次の日、次の局面、次の瞬間に何が起こるのか目を離すことが出来ませんでした。それは選手同士の勝負のみならずアクシデントの観点でもそうでした。
同時に、そのような例年以上に厳しいツールは第5ステージの「逃げ0人」という形として表れたのであって、第2週以降にこのストレスがどう影響するのか気になります。
何せ今年のツールは第1ステージから落ち着かないものでした。
stage1
今大会の第1ステージは乾燥した路面に雨が降ったことにより路面に油や汚れが浮き出し、表面がスケートリンクのように滑りやすい状態になりました。
出場選手176名の内、その半数以上の100何人かこのステージで落車したようです。
むしろ落車していない選手の方が珍しい感じです。
バルベルデが落車リタイアしたツール2017など、初日から雨が降っていて重要選手が落車した年はあるものの、これほどまでに落車が頻発した初日はないです。
総合争い関連の重要選手も多く落車の影響を受けました。
私が事前予想で言及したIneosの重要アシストであるシヴァコフは特に落車に悩まされた総合争い関連選手の一人であって、この瞬間Ineosの戦力は大幅にダウンしました。
また、残り3kmを切った時点での落車に有力な優勝候補であったピノが擦過傷を負うような落車をしてしまいました。そのダメージが原因で、結局第8ステージで実質的に総合争いから脱落してしまいました。
そんな状況にもかかわらず何故かスピードアップを試みたアスタナは危うくエースのロペスを落車で失いかける場面もありました。
ラストのスプリントでまさかのクリストフが勝利したのは感動ものでしたが、私はそれまでスプリントどころじゃありませんでした。
実際走っている選手達は尚更ストレスフルな日だったでしょう。
stage2
A・イェーツの嘘つき!!
事前予想で私が重要ステージとして挙げたのは第4ステージでしたが、それはあくまでこのステージで大きなことが起こらなければという前提があってのものでした。
そして、このステージでアラフィリップが仕掛けるかもしれないということもその時に示唆していたのですが、私が予想外だったのはA・イェーツもどさくさに紛れて仕掛けたことでした。
アラフィリップは今後の山岳ステージでジャージをキープすることは出来ないはずなので、ここでマイヨジョーヌを獲得しても、少なくとも第1週(私は第4ステージと思っていました)で本命の総合系チームがジャージを獲得すると思っていました。
そして、最初に第1週でジャージを獲得する総合系チームは十分にレースをコントロールする能力のあるIneosかユンボだと予想していました。
しかし、蓋を開けてみると第1週にジャージを長くキープしていたのはミッチェルトンスコットのA・イェーツであり、それはこの第2ステージでアラフィリップのアタックに乗じて秒差を稼いだからでした。(ペナルティも一因でしたが)
A・イェーツは開幕前に今回は総合狙いではないと表明していたので私も別に気にもかけなかったのですが、自転車ロードレースはそういう嘘がまかり通るスポーツだとはいえ、やはり嘘つきでしょう。
本当はマイヨ・ジョーヌ狙いだったとは、狂いかけていた予想を完全に狂わされました。
stage3
第1週の中で一番昔ながらのツールらしいステージになりました。今大会は元々スプリンターが活躍できるステージが少ない上、色々と極端です。
前を逃げる集団が生まれ、それをスプリンターチームの牽引で追いかけ、最後にスプリンターエースが火花を散らす。
ユアンが芸術的スプリントで見事勝利しました。いやぁ、凄かった。
stage4
私が今大会で最も重要でないかと思っていたステージです。
私が何故このステージを最重要ステージだと位置づけていたのかということは事前予想の方を見て頂ければ幸いなのですが、その事前予想は大きく外れたと言って良いでしょう。
結論から言って、私は以下3つの点で事前想定を間違えていました。
①ログリッチの状態が予想以上に良かった一方で、Ineos勢全体がイマイチであった点。
②どの総合系チームもこの段階でリーダーチームに積極的になろうとは思っていなかった点。
③アラフィリップがこのステージでは遅れなかった点。
私は既に優勝予想を大きく外したのですが背後の考えは大きく間違えたとは未だ思っておらず、第1週を終えた後もこのステージの優勝者が総合優勝において大きな意味を占めてくるという考えはやはり変わっていません。
ログリッチが優勝濃厚です。
このステージではIneosは最終盤に自慢のアシスト陣が誰も残っておらずベルナルが集団に残るのが精一杯であり、プランBのカラパスはタイムを失いました。
一方、ステージ優勝したログリッチ及びユンボ、これが今回のツールで最強のチームなんだと再確認出来ました。
このステージを機にIneos対ユンボという構図が、ユンボ対他チームという構図に切り替わったように思えます。
(しかし、その事実を隠すために第7ステージでIneosは強気な横風分断作戦を試み遂行しました。ウィギンスが言うようにこれがSkyのやり方なんでしょう。ただ、それは第1週のIneosが全体的にイマイチ良くない何よりもの証拠です)
また、総合狙いのチームがこの時点でジャージを積極的に取りに行きたくなかったというのが想定違いでした。それは今大会最強チームのユンボですらそうでした。
仮に最盛期のSkyであれば恐らくこのステージで集団を破壊し、ジャージを獲得し最後までキープしようとしたでしょう。もしかしたら近年のそういう過剰なコントロールがあるレースが異常だっただけで、それが普通の感覚なのでしょうか。
いずれにせよ、第4ステージでログリッチが勝利したものの事前予想のようにユンボがリーダーチームとなって集団を最初から最後まで統率したり、全方向から攻撃を受ける状況は第1週で生まれませんでした。
これはアラフィリップが山岳のふるい落としで大きく遅れなかった結果とも言えますが、明らかにそこまで厳しい攻撃をどのチームも仕掛けませんでした。
クイックステップがある程度集団を統率してくれる状況は確かにどの総合系チームにとっても有難い状況でした。
それでログリッチという本命選手が勝利して他に差を付けながらも、この時点ではリーダーチームではないというステージ結果になったのだと言い訳しておきます。
stage5
驚きました。やはり今年のツールは予想不可能です。
逃げが一切生まれないという異様なレース光景をこの目で見ることが出来ました。
しかも、自転車大会で一番有名なツールでですよ?
これには山岳ポイントの旨味がないことや逃げ切り勝利の確率が低いことなどいくつか要因がありますが、
「皆疲れていた」、この理由に尽きるでしょう。
このステージに関して選手をはじめ多くの関係者が意見を述べていましたが、確かに近年のツールの総合偏重・勝利偏重の傾向はどこかでバランスを取るべきだとは私も思います。
全ての選手に活躍の機会があるような大会が望ましいです。脚質や見せ場が違って皆良い。
極端に短いステージを大胆な数入れてみてもいいのではないでしょうか。どうなるのか一度見てみたい気はします。
stage6
このステージで何かが起こるためには少々最後の勾配が低かったと思います。総合成績が大きく動くことはありませんでした。
その割に休めるステージという訳でもなく、選手たちは本当にしんどかっただろうと思います。
おかげで見ている方は面白いのですが。
それにしても、カザフスタンチームのアスタナがカザフスタンチャンピオンを優勝させることが出来たのは良かったのではないでしょうか。
stage7
昨年と同じく今大会も絶対一回はあるだろうと思っていた横風分断作戦。
それがこうも早い段階・厳しいタイミングで行われるとは……Ineosは性格が悪いです。
ただ、一番最初の横風分断作戦はBORAによって遂行されました。これは他のスプリンターエースをふるい落としサガンを勝利させ、マイヨヴェールを獲得確実なものにするためです。
この作戦は上手くハマりました。どのチームも過酷なステージ続きの中で大胆な作戦をレース序盤から決行するとは思っていなかったのでしょう。
総合系エースがこの段階で後ろに下がることは無かったものの、トニー・マルティンやルーク・ロウなど横風用平坦アシストをIneosとユンボは下げてしまいました。
そして、再度横風分断作戦が行われたのはラスト35km辺り。
山を抜け市街地に出たタイミングでIneosがシレっと前に出てきたかと思うと、ペダリング全開で集団を引き始め、集団を分断させました。
引き初めにわざと左に寄って分断を発生させてから右に寄って協調を促すという徹底ぶり。まあ、作戦なので当然なのですが……。
思わず「性格悪いって!」と画面を見ながらエキサイティングしてしまいましたが、それに見事にハメられたランダ・ポガチャル・ポート・モレマはタイムを1分20秒ほど失ってしまいました。
ランダ……。
バーレーンは運悪く、アシストがわちゃわちゃと落車して後ろに下がったタイミングでスピードが上がってしまいました。
まだゲームオーバーではないものの、平坦で1分20秒を容易に失うのは痛すぎます。強いエース達を相手に山岳でそれだけのタイムを稼ぐのは大変なのです。
これが40秒ほどであればマークから外れることで逆にアタックでそれ以上に挽回できるような秒差なのですが、果たしてこの秒数が最後どう響くのか。(実際、第7ステージでポガチャルは40秒ほど稼ぎ出しました)
私はまだランダを信じています。
ただ、私はこの横風分断作戦を本当はineos以外のFDJ辺りの単独エース系チームが行わないといけないと思っていました。
何故ならば、Ineos・ユンボは強力な平坦要員を前半で失っているからです。それに、Ineosが何か仕掛けたがっていることは分かっていたはずです。
当然疲れはあると思うのですが、強いチーム相手にはそういう風に積極的に仕掛けないと勝てないだろうと思います。(Skyを他チームで団結して倒すべきなのが牽制し合ってむしろSkyが有利になるという状況がそれです)
その点ではIneos以外のチームに落胆してしまいました。
stage8
ここまでだけでも相当厳しい戦いが続いていましたが、ピレネー決戦に入ります。例年と異なり今年はピレネー決戦が2日間となっています。
ただ、私はこのピレネーステージを重視していませんでした。というのも、今回のピレネーステージは全て下りフィニッシュだったからです。
正直、見ている側としてはこの下りフィニッシュレイアウトはあまり好きではありません。
近年のツールは下りが得意なバルデ忖度の影響なのか山頂フィニッシュではなく最後に下り(と平坦)が設定されていることが多く、けれどもそれで大きな差が着いた覚えはあまりないからです。
実際、このピレネーステージで着いた秒差というのは前のステージの横風分断で若干遅れを取っていて見逃されたポガチャルの約40秒以外はボーナス秒がほとんどなのであって、stage9でせいぜい11秒を先行集団が稼いだぐらいです。
(※終盤局面までのふるい落としで大きく遅れることは除く)
これは当然のことで、選手達には最後に上りで一人飛び出してそのまま下るというリスキーな選択にインセンティブが働かないからです。
フルームのダウンヒルアタックみたいな例は珍しいです。
後は単独で下り秒差を稼ぐことが出来るのは現役選手では二バリぐらいではないのでしょうか?ログリッチも下りは早いですが、そこまでリスキーなことをこの有利な局面・序盤で選択しないのが普通です。
(下りフィニッシュレイアウトについては確かランスも不満を言っていた覚えがあります)
それでこのステージではポガチャルが見逃されて、他の選手達は足を全開に使ってそのアタックに反応することも無いという結果になりました。
ポガチャルのアタックは確かに強烈でしたが、足を使えば後ろに着くことが出来た選手はいたと思います。しかし、そこまでして稼ぐことが出来る秒差と今後を天秤にかけたときそこまで激しいぶつかり合いはしたくないという所だったと思います。
stage9
まさに第1週の総括みたいなステージになったという印象です。
第1週の調子そのまま総合勢がゴールしたと思いました。
明らかに第1週一番強かったのはポガチャル、次いでログリッチでした。スロベニア勢が強いです。
ベルナルも第8ステージなどでは着いていくのがやっとのような感じに見えましたが、このステージでは走りにも勢いがあった……というか、怖いことに調子を上げてきている気がします。
Ineosは第3週に調子を合わせて来ているという情報をJSPORTS解説陣が話していたり、なんとも不気味です。
しかしともかく、第1週ではスロベニア勢より強くなかったことは確かです。
そして、私的には何よりもランダ。
やはりランダは強い漢です。横風分断の際、アシスト勢が落車していなければ……と悔やまれますが、仕方ないです。
第1週を終えてログリッチに「1分42秒」の差がありますが、まだまだ逆転の可能性があります。何故ならば、ジロ2019ではログリッチが落車で調子を落とす前に「2分9秒」第2週の山岳ステージで秒差を正面から奪っているからです。
もちろんジロとツールは山の性質が違いますし、特にユンボはアシストの強さの面で圧倒的に異なっていますが、残り2週はえげつないステージと本格的な山頂ゴールが待っていますので何が起こるか分かりません。
私はジロ2019のカラパスのように、この「1分42秒」の差が逆にマークから外れやすくなって有利に働くのではないかと期待しています。
イマイチJSPORTS解説陣や各メディアから注目されていないランダですが、注目されていないことはロードレースでアタックを決めるためにはいいことです。
ランダが熱い走りを見せてくれることを期待しています。
ガンバレ!ランダ!!