ドーフィネ2020が終了しました。
コロナの影響で例年よりステージが減りレイアウトは山・山・山だった今年のドーフィネですが、ドーフィネ前に予感していたことはそこそこ当たっていたと思います。(普通に外した部分も多いですが)
同時に、その際には取り上げなかった選手やチームの様子も見ることが出来たので見通しの修正も行わなければなりません。
それにしても今年のドーフィネは非常に不気味な雰囲気というか、例年の「ツール前哨戦」ではない感じがしました。
目次
ツール前哨戦なのに調整不足の選手達
今年のシーズンはコロナの関係でどの選手も調整不足で、手探りのままコンディションを合わせていかないといけないということは誰もが言っていたことです。
実際にUCIレース再開後のレースを見ていると、素人の私ですらどの選手もコンディション調整に苦労していることが分かるぐらいでした。
そして、それをドーフィネ前の見通しとして記事に書きました。
見通しの修正は後の項目で書きますが、そのせいか今年のドーフィネはどことなく異様な雰囲気が漂っていました。
ツール前哨戦とはとても思えない不気味な感じです。
何が不気味なのかというと、各選手が調子を落としているのかそれとも逆に足を隠しているのかが分からないのです。
それが顕著に現れたのが第4ステージで、その日は背中の痛みを覚えたIneosのエガン・ベルナルがスタートしませんでした。
しかしJSPORTSの解説を聞くところによると、その日の朝から自転車に乗って練習に出かけるベルナルが目撃されているらしく、これは作戦的回避である可能性があります。
そしてまた、ベルナルというエースを失ったその日のIneosは比較的自由に走ることが出来るのでクフィアトコフスキが逃げに乗り、G・トーマスは程よい所で余力を残したような感じで落ちていきました。
JSPORTS解説の栗村修さんもG・トーマスはベルナルの陰に隠れて虎視眈々とマイヨジョーヌを狙っているのではないかと、「勘(カン)ピュータ」がそう告げているとおっしゃっていました。そのために足を隠しているのだと。
他にもミケル・ランダは、第4ステージでは調子が良く前日まで隠していた足を見せるのではないかという情報が入っていたのにも関わらず大きな動きは見せずに集団の中の方でゴールして、続く第5ステージでは総合争いから脱落。
最終日はバッドデイだったようです。(5日間でバッドデイというのは少し心配ですが、ランダを信じましょう)
また、第5ステージではキンタナが膝の痛みで途中リタイアしました。
第4・5ステージで逃げに乗ったアラフィリップもステージ優勝を狙うというよりは、調整のためにとにかくペダルを踏みたかったという風に見えました。
一方で、私が全く取り上げなかったダニエル・マルティネス、ポガチャルのような若手選手達が最後に活躍したりして全く展開が読めませんでした。
調子が悪いのか、足を隠しているのか、調整を優先させているのか、各選手の思惑は結局ツールが始まるまでは分からないようです。
通常「ツール前哨戦」のドーフィネにはコンディションがほぼ完成した状態で乗り込むので、ステージ勝利や総合優勝というのは調整の仕上げ的に取りに行く・取れてしまう傾向がありますが今年はどうも違いました。
ドーフィネを踏まえた見通しの修正
ドーフィネ前に行った予想と見通しをツール予想に向けて修正せねばなりません。
取り上げた選手やチームについてはJSPORTSの解説陣の話を聞く限りも大きく外れたことは述べていなかったのですが、やはり実際のレースを見ると考えは変わるものです。
私があの記事を書いたときはまだツール・ド・ランをチェックしていなかったので、ユンボヴィズマの様子が分かっていませんでした。
そして、ユンボが強いと思っていた矢先に第4ステージでのログリッチ・クライスヴァイクの落車が起き、それぞれが途中リタイア。一方で、依然としてエースを抜いたチーム力はダントツです。
もうどこから書いたらいいのか分かりません。
とりあえず、ユンボについて書いて行きます。
強すぎるユンボとログリッチ
去年にトム・デュムランの加入が発表され、また早々にデュムラン・ログリッチ・クライスヴァイクのトリプルエース体制でツールに挑むことを発表していたユンボですが、まぁ~強い!
舐めていた訳ではなかったのですが、私はここまで強いとは正直思っていませんでした。
それには大きく以下3つの理由がありました。
①ロードレースという競技において複数エースは成立しないと考えるから
②ログリッチがここまで強いとは思っていなかったから
③セップ・クスやジョージ・ベネットといった若手アシストがエース級の戦いに終盤まで残れるとは思わなかったから
各理由を簡潔に説明します。
①について少なくともドーフィネではユンボはキチンとエースの序列を決めていたようで、終盤ではデュムラン・クライスヴァイクがログリッチを引くという光景が見られました。
トリプルエース体制と言えどこれが正しい在り方だと私は思うのですが、去年までのモビスターの悪いイメージが脳裏をよぎるフレーズだったので心配していました。
②について去年の活躍も通してログリッチの強さは知っていたつもりだったのですが、まさかここまで圧倒的に他のエース格の選手に差を付けるような勝ち方がUCIレース再開後に出来るとは予想していませんでした。
JSPORTS解説で言われていましたが、ログリッチの出身国であるスロベニアはコロナ対策の制限が緩く外トレーニングを行うことが出来ていたようです。
一方で、JSPORTS第5ステージの解説の中で浅田監督がここまでのトップ選手達がコンディション調整をそこまで大きく外すことはない(差はあまりない)のではないかという感想を述べておられていました。
ログリッチの強さがコンディションの差なのか、実力差なのか、はたまたアシストの差なのか……これが分かりません。
③について今年はどうもこういう若手選手がアシスト・エースの立場問わずレース・勝負のカギを握っているのだろうとそう思い直しました。
ですので、その面からもユンボは強いです。一方で有力候補のIneosはベルナルはもちろんシヴァコフの活躍が目立っていますが、他のベテラン勢。これがどうなるかが気になります。
特に③、ここがツールでもユンボの勝負の要になるでしょう。
ただ、ともかく今は落車したクライスヴァイク・ログリッチの容態が心配です。
コンディションを元に戻してツール出場することを願います。
ドーフィネ前の予想・見通しの修正
ドーフィネを見た上で、ドーフィネ前に行った予想と見通しを修正します。
私はドーフィネ第2ステージ・第4ステージの走りで判断するのが良いように思いました。選手達もこの2ステージが特に厳しいと思っていたようでした。
ここで大きく遅れていなければ、期待できるのではないかと思います。
調整が上手くいっていて調子もまあまあ良いのではないかと挙げていた選手、ミケル・ランダ、ティボー・ピノ、ナイロ・キンタナについては依然として読めない部分がありますが、大きく調整を外すということはないと思います。
特にランダとピノに関しては、第1週序盤の山岳ステージ(確か第4ステージ)の時点で総合争いから脱落というようなことはないと思います。総合優勝の有力候補です。
キンタナは今年に関しては物凄く期待しているのですが、一方で近年のがっかりするような調子の落とし方のイメージが強いため完全には信用していません。第4・5ステージの走りがそういうがっかり理由でなかったことを願います。
またダブルエース体制のチーム、TrekとAG2Rについては期待しているものの依然としてエース達の状態が日々読めません。Trekはポート次第、AG2Rは……両エースが3週間のどこかで失速しそうな気がしています。
ダブルエース作戦はダブルエースを同レベルで高いコンディションに合わせることが肝要ですので、蓋を開けてみると即終了みたいな残念な結果にならないよう祈ります。
ただ、特にツールではリーダーチーム(ユンボ・Ineos)の厳しいコントロールもあって作戦がハマりにくいと思います。両エースの牽制力が効いている内に早く大きく仕掛けてみて欲しいとも思います。
一方で、コンディションがあまり良くなさそうなチームとして挙げたモビスターはやはりあまり期待できなさそうです。
ツールでは調子を戻したエンリク・マスがどこかでステージ優勝するのを楽しみにしておきます。
バルベルデも総合狙いは難しい感じがしています。どこかでマイヨジョーヌを着て欲しいとは思っているのですが。
また、ミゲルアンヘル・ロペスはどうなんでしょうか?
私がドーフィネ前に懸念していたよりは調子が良さそうでツールでも最低限の戦いはしてくれそうなのですが、彼の持ち味である積極的な攻撃が見れるほどに調子が良さそうなのかは怪しいと思いました。
第5ステージでは、ツール上位を狙うならばせめて優勝したマルティネスやポガチャルのグループには最後までついて行って欲しかったと思います。途中の攻撃もむしろ自分の調子がそこまでだから先に仕掛けていた印象がありました。
ただ上記Tweetのリンク先インタビューによると、ロペス自身はそんな自分の状態を分かった上で日に日にコンディションが上がっている実感はあるようなので、残り2週間で本来の力を戻し、初ツールで積極的な攻撃を見せてくれることを期待します。
そして、一番気になるのはクリス・フルームですね。ドーフィネでは結局全てのステージで後ろに下がって行きました。
JSPORTS解説陣も皆調子が良くなさそうと言っていました。
インタビューではベルナルやGは「フルームは必要」みたいなことを言ってましたが、エース問題的にも調子が悪ければフルームは連れて行かない方が良い立場の選手ですのでIneosの判断とスタートリストが気になるところです。
場合によっては、フルームの枠のアシストの差でベルナルが負ける可能性があります。
しかし、そういう調子が悪そうな様子すらもフルーム・Ineosの演技で、始まってみればバリバリに調子がいいみたいな印象操作作戦だったならば完全降伏です。(その可能性がぬぐえないのが恐ろしい)
そーなったらSkyアンチの私も素直に賞賛せねばなりません。
ともかく、各チームのツールスタートリストが待ち遠しいです。
では、さよなら。